【初心者必見】PER・PBRとは?株価の割安・割高を判断する見方を徹底解説
株式投資に興味を持ち始めたけれど、「PERやPBRという言葉をよく聞くけど、一体何のことだろう?」「株価が割安か割高かって、どうやって判断すればいいの?」そんな疑問を抱えているビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。
企業の株価は毎日変動しますが、その価格が本当にその企業の価値に見合っているのかを判断するのは難しいものです。そこで役立つのが、今回ご紹介するPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)という2つの指標です。これらは、企業の「稼ぐ力」と「資産価値」から株価の妥当性を測るためのモノサシのようなものです。
この記事では、株式投資の初心者でもスムーズに理解できるよう、以下の内容を豊富な図解や具体例を交えながら、専門用語を極力使わずに丁寧に解説していきます。
- PERとPBRの基本的な意味と計算方法
- それぞれの指標の目安と、どう見れば良いのか
- 投資する上での注意点や、初心者が陥りがちなワナ
- 実際の企業の例で見るPER・PBRの数値
- 合わせて知っておきたい関連指標「ROE」について
この記事を最後まで読めば、あなたも企業の株価が割安か割高かを自分自身で判断できるようになり、より自信を持って銘柄選びができるようになるでしょう。
1. PER(株価収益率)とは?企業の「稼ぐ力」で株価を判断する
まずは、PERから見ていきましょう。PERは「Price Earnings Ratio」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。 [7] これは、現在の株価が、その企業の「1株あたりの利益」の何倍になっているかを示す指標です。 [26]
簡単に言えば、「その会社が稼ぐ力(利益)に対して、株価は割安なのか、それとも割高なのか」を判断するための物差しと考えてください。PERの単位は「倍」で表されます。 [27]
PERの計算方法
PERは以下の簡単な式で計算できます。 [1]
PER (倍) = 株価 ÷ 1株当たり純利益 (EPS)
ここで出てくる「1株当たり純利益(EPS)」とは、会社が1年間で上げた純利益を、発行している株式の総数で割ったものです。つまり、株1株分がどれだけの利益を生み出したかを示します。 [12]
【具体例で考えてみよう】
- A社の株価:2,000円
- A社の1株当たり純利益(EPS):200円
この場合、A社のPERは「2,000円 ÷ 200円 = 10倍」となります。これは、今の株価が1株当たり利益の10倍であることを意味します。見方を変えれば、「もしこの会社を買収したら、投資した資金を10年間の利益で回収できる」という風に考えることもできます。
PERの目安と見方
PERの数値が分かっても、それが高いのか低いのか分からなければ意味がありません。一般的に、PERには以下のような見方があります。
- PERが低い:会社の利益に対して株価が割安
- PERが高い:会社の利益に対して株価が割高
では、具体的に何倍くらいが目安になるのでしょうか?
日本では、日経平均株価の平均PERが長年15倍前後で推移してきたことから、一般的に「15倍」がひとつの目安とされています。 [1, 9] もちろんこれは絶対的な基準ではありませんが、15倍より低いか高いかで、大まかな割安・割高感を掴むことができます。
ただし、重要なのは「業種によってPERの平均値は大きく異なる」という点です。 [30] 例えば、安定しているけれど急成長は期待しにくい電力・ガスのような業種はPERが低めに出やすく、一方で将来の大きな成長が期待される情報・通信(IT)関連の業種はPERが高くなる傾向があります。 [30]
したがって、PERを比較する際は、全く違う業種の会社と比べるのではなく、同じ業種のライバル企業と比較することが非常に重要です。 [8]
2. PBR(株価純資産倍率)とは?企業の「資産価値」で株価を判断する
次に、PBRについて解説します。PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、日本語では「株価純資産倍率」と呼ばれます。これは、現在の株価が、その企業の「1株あたりの純資産」の何倍になっているかを示す指標です。 [9]
PERが企業の「利益(フロー)」に注目するのに対し、PBRは企業が持っている「純資産(ストック)」に注目します。 [8] 純資産とは、会社の総資産から負債(借金など)を差し引いた、いわば「会社の正味の財産」のことです。もし会社が解散することになった場合に、株主の手元に戻ってくる理論上の価値であるため、「解散価値」とも呼ばれます。
PBRの計算方法
PBRも簡単な式で計算できます。 [1]
PBR (倍) = 株価 ÷ 1株当たり純資産 (BPS)
ここに出てくる「1株当たり純資産(BPS)」は、会社の純資産を発行している株式の総数で割ったものです。 [12] 株1株あたり、どれくらいの純資産があるかを示します。
【具体例で考えてみよう】
- B社の株価:3,000円
- B社の1株当たり純資産(BPS):3,000円
この場合、B社のPBRは「3,000円 ÷ 3,000円 = 1倍」となります。株価と1株あたりの純資産が同じ価値であることを意味します。
PBRの目安と見方
PBRの目安は非常にシンプルで、「1倍」が基準となります。 [1, 8]
- PBRが1倍:株価と会社の解散価値が等しい状態。妥当な水準と見なされる。 [1]
- PBRが1倍を上回る:株価が解散価値よりも高く評価されている状態(割高)。市場がその企業の将来性やブランド価値などを高く評価していることを示す。 [1]
- PBRが1倍を下回る(1倍割れ):株価が解散価値よりも安く評価されている状態(割安)。もし今会社が解散すれば、理論上は投資した金額より多くのお金が戻ってくることを意味する。 [1, 27]
下の図はPBRのイメージです。純資産(会社の財産)が同じでも、市場からの期待値によって株価(時価総額)が変動し、PBRが変わることがわかります。
PBRもPERと同様に、業種によって平均値が異なります。例えば、大きな工場や設備を必要とする製造業と、知的財産が中心のITサービス業とでは、資産の構造が全く違うため、PBRの平均水準も変わってきます。 [16] そのため、PBRを見るときも同業他社との比較が有効です。 [29]
3. PERとPBRの使い分けと注意点【初心者が陥りがちなワナ】
PERとPBRはどちらも株価の割安度を測る便利な指標ですが、これだけで投資判断をするのは危険です。 [1] ここでは、これらの指標を使う上での重要な注意点を解説します。
注意点1:指標の数値が低いからといって、すぐに「買い」ではない
初心者が最も陥りがちなのが、「PERが低いから割安だ!」「PBRが1倍を割っているからお買い得だ!」と安易に飛びついてしまうことです。
【低PERのワナ】
PERが低い背景には、以下のような理由が隠れている可能性があります。
- 成長が期待されていない:市場が「この会社はこれ以上成長しないだろう」と判断している。
- 一時的な利益:不動産売却などの「特別利益」によって、その年だけ利益が急増し、見かけ上PERが低くなっている。
- 業績悪化のリスク:今は利益が出ていても、今後は業績が悪化すると市場が予測している。
【低PBRのワナ(バリュートラップ)】
PBRが1倍を割れている銘柄が、その後もずっと株価が上がらずに放置されることがあります。これを「バリュートラップ(割安のワナ)」と呼びます。 [16] その原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 収益性が低い:資産はたくさん持っているが、それを上手く利益に繋げられていない。
- 資産の質が悪い:帳簿には載っているものの、実際には価値のない資産(例:売れない在庫、古い工場など)が多い。 [29]
- 経営に問題がある:市場から経営方針が評価されておらず、将来性に懸念を持たれている。 [29]
これらの指標が低い場合は、「なぜ市場はこんなに低く評価しているのだろう?」と、その理由をしっかり調べることが重要です。
注意点2:赤字の会社はPERが計算できない
会社が赤字の場合、1株当たり純利益(EPS)がマイナスになります。そのため、PERを計算することができません。 [17] 証券会社のサイトなどでは「-(ハイフン)」や「算出不能」と表示されます。赤字企業に投資する場合は、PER以外の指標(PBRや財務の健全性など)で判断する必要があります。
注意点3:成長企業はPER・PBRが高くなる傾向がある
将来大きな成長が期待されている「成長株(グロース株)」は、現在の利益や資産に対して、将来の期待が株価に織り込まれるため、PERやPBRが高くなるのが一般的です。 [17] 例えば、革新的な技術を持つIT企業やバイオベンチャーなどがこれに当たります。
これらの企業を「PERが高いから割高だ」と判断してしまうと、大きな成長のチャンスを逃すことになりかねません。成長株に投資する場合は、PERの高さだけでなく、「なぜ市場はそこまで高い期待を寄せているのか?」という成長ストーリーを理解することが大切です。
【一覧表】PERとPBRの比較まとめ
ここで、PERとPBRの違いを整理しておきましょう。
項目 | PER(株価収益率) | PBR(株価純資産倍率) |
---|---|---|
正式名称 | Price Earnings Ratio | Price Book-value Ratio |
何を見ているか | 企業の収益性(稼ぐ力) [9, 17] | 企業の資産価値(安定性) [27] |
計算式 | 株価 ÷ 1株当たり純利益 (EPS) | 株価 ÷ 1株当たり純資産 (BPS) |
判断 | 数値が低いほど割安、高いほど割高 | 数値が低いほど割安、高いほど割高 |
一般的な目安 | 15倍 [9] | 1倍 [8] |
特徴 | ・将来の成長期待が反映されやすい ・景気や業績の変動に影響されやすい [27] |
・企業の財務的な安定性が見える ・比較的、数値が安定している |
4. 実際の企業で見てみよう!PER・PBRの実例
では、実際の日本を代表する企業のPERやPBRはどのくらいなのでしょうか?具体例を見ると、より理解が深まります。(※株価は常に変動するため、以下の数値は2025年7月上旬時点の概算値です)
トヨタ自動車 (7203) [11, 15, 19, 23]
- PER:約10.5倍
- PBR:約0.9倍
世界的な自動車メーカーであるトヨタは、PERが目安の15倍を下回り、PBRも1倍を割っており、巨大企業ながら株価は割安な水準にあると見ることができます。 [15, 23]
ソニーグループ (6758) [10, 13, 22]
- PER:約23.8倍 [13]
- PBR:約2.7倍 [22]
ゲーム、音楽、映画、エレクトロニクスなど多角的な事業を展開し、世界中にファンを持つソニーグループは、PERもPBRも市場平均より高い水準にあります。 [10] これは、市場が同社のブランド力やコンテンツ創出力、今後の成長性を高く評価していることの表れと言えるでしょう。
このように、企業のビジネスモデルや市場での立ち位置によって、PERやPBRの数値は大きく異なります。これらの指標は、証券会社のウェブサイトやアプリ、Yahoo!ファイナンスのような投資情報サイトで簡単に確認できます。 [16, 24] 気になる企業があれば、ぜひ一度チェックしてみてください。
5. もう一歩先へ!合わせて知りたい「ROE(自己資本利益率)」
PERとPBRを理解したら、次にもう一つだけ重要な指標を覚えておきましょう。それがROE(自己資本利益率)です。
ROEは「Return On Equity」の略で、企業が株主から集めたお金(自己資本)を使って、どれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。 [3, 5] つまり、「お金の使い方がどれだけ上手いか」を表す指標と言えます。
ROEの計算方法と見方
ROEは以下の式で計算され、「%」で表されます。
ROE (%) = (当期純利益 ÷ 自己資本) × 100
ROEは、一般的に10%以上あると優良企業の一つの目安とされています。 [2, 3] ROEが高い企業は、資本を効率よく使って大きな利益を生み出している「稼ぐ力のある会社」と評価できます。 [3]
実は、PER・PBR・ROEは互いに密接な関係にあり、以下の式が成り立ちます。
PBR = PER × ROE
この式からわかるように、PBRが1倍を割れているような企業でも、もしROEが高ければ(つまり、稼ぐ力が強ければ)、将来的に株価が見直されて上昇する可能性があります。逆に、PBRが低くても、ROEも非常に低いままだと、それは単に「収益性の低い、魅力のない会社」と見なされ、株価が上がらない「バリュートラップ」の状態かもしれません。
PERやPBRで割安に見える銘柄を見つけたら、ぜひROEもチェックして、「その会社は効率的に稼ぐ力があるのか?」という視点を加えることで、より精度の高い投資判断ができるようになります。 [1]
まとめ:指標を使いこなし、賢い投資家を目指そう
今回は、株式投資の基本的な分析指標であるPERとPBR、そして関連指標のROEについて解説しました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- PER(株価収益率)は、企業の「稼ぐ力(利益)」から株価の割安度を測る指標。目安は15倍。
- PBR(株価純資産倍率)は、企業の「資産価値」から株価の安定性や割安度を測る指標。目安は1倍。
- どちらの指標も、数値が低いほど割安とされるが、低いからといって安易に飛びつくのは危険。その背景にある理由を考えることが重要。
- 指標を比較する際は、同業他社やその企業の過去の推移と比べることが基本。
- ROE(自己資本利益率)も合わせて見ることで、企業が「効率的に稼げているか」という視点が加わり、より多角的な分析が可能になる。
これらの指標は、あくまで過去の実績や現在の株価から算出されたものです。投資の最終的な判断は、これらの数値に加えて、企業の将来性やビジネスの強み、経済全体の動向なども考慮して総合的に行う必要があります。 [12]
今日学んだ知識を武器に、ぜひあなたも気になる企業の株価を分析してみてください。数字の裏側にある企業のストーリーを読み解くことが、株式投資の面白さであり、成功への第一歩となるはずです。