【初心者向け】株式投資のリスク管理入門|1取引の許容損失とポジションサイズの計算方法

【初心者向け】株式投資のリスク管理入門|1取引の許容損失とポジションサイズの計算方法

投資 リスク管理 グラフ

株式投資で成功するためには、どんな銘柄を選ぶか、いつ売買するかといった「攻め」の戦略と同じくらい、あるいはそれ以上に「守り」の戦略、すなわちリスク管理が重要です。 [18, 26] 特に初心者の方は、一度の大きな失敗で大切な資金を失い、市場から退場してしまうケースが少なくありません。そうした事態を避けるために、プロの投資家が例外なく実践しているのが「資金管理」です。 [3, 4, 10]

この記事では、投資初心者やビジネスパーソンの方に向けて、リスク管理の核心である「1取引あたりの許容損失」の考え方と、それに基づいた適切な「ポジションサイズ(取引数量)」の計算方法を、専門用語を避けながら分かりやすく解説します。 [9, 23, 30] この記事を読めば、感情に流されず、規律あるトレードで着実に資産を築いていくための土台となる知識が身につきます。

なぜリスク管理がそれほど重要なのか?

投資の世界には「損小利大」という言葉があります。これは、損失は小さく抑え、利益は大きく伸ばすことが成功の鍵である、という意味です。 [2] しかし、多くの初心者は心理的に「利益は早く確定したい」「損失はいつか戻るはずだ」と考えがちで、結果的に「利小損大」の行動を取ってしまいます。 [1] これを防ぐのがリスク管理の役割です。

成功しているトレーダーは、トレードを始める前に「もし予想が外れたら、最大でいくらまで損失を受け入れるか」を明確に決めています。 [4, 5] この上限を決めておくことで、以下のようなメリットが生まれます。

  • 致命的な損失を避けられる: 一度の失敗で再起不能になるほどのダメージを受けることを防ぎます。
  • 冷静な判断を保てる: 損失が限定されていると分かっていれば、パニックに陥ることなく、計画通りのトレードを続けられます。 [6]
  • 長期的に市場に残り続けられる: 大きな損失を避けることで、経験を積み、次のチャンスを待つことができます。 [9]

有名な「2%ルール」という考え方があります。 [8, 16] これは、1回の取引でリスクに晒す金額を、投資資金全体の2%以内に抑えるというルールです。 [15, 29] 例えば、100万円の資金があれば、1回のトレードでの最大損失を2万円に限定します。このルールを守れば、たとえ5回連続で負けても、失う資金は全体の10%程度に収まり、冷静さを保ちながら取引を続けられます。

リスク管理の3つの基本要素

効果的なリスク管理は、主に3つの要素から成り立っています。これらを事前に決めておくことが、規律あるトレードの第一歩です。

1. 1取引あたりの許容損失額を決める

まず、あなたの投資資金全体に対して、1回のトレードで失ってもよい金額の上限を決めます。これが「許容損失額」です。前述の「2%ルール」は非常に有名で、多くのプロトレーダーが採用しています。 [8, 16, 25] より慎重な場合は1%にするなど、自身のリスク許容度に合わせて設定します。重要なのは、常に一定の割合に保つことです。

【具体例】
投資資金:100万円
許容損失率:2%
1取引あたりの許容損失額:100万円 × 2% = 2万円
つまり、どんな取引をするにしても、1回の負けで失う金額は最大2万円まで、と事前に決めるわけです。

2. リスクリワードレシオを意識する

リスクリワードレシオとは、1回の取引における「リスク(損失額)」と「リワード(利益額)」の比率のことです。 [21, 33, 34] 例えば、最大損失を1万円に設定し、利益目標を2万円に設定した場合、リスクリワードレシオは1:2となります。 [21]

一般的に、この比率は最低でも1:2以上、理想は1:3を目指すべきだと言われています。 [34, 35] なぜなら、リスクリワードが1:2であれば、勝率が34%以上あればトータルで利益が出る計算になるからです。 [8, 35] 逆に、勝率が50%あっても、リスクリワードが1:1では手数料を考えると利益はほとんど残りません。常に損失額より大きな利益額を狙うことで、勝率がそれほど高くなくても資産を増やせる可能性が高まります。 [34]

3. 損切り(ストップロス)を徹底する

損切りとは、含み損を抱えた株を売却して損失を確定させることです。 [1, 2] これはリスク管理において最も重要な行動と言っても過言ではありません。 [5] 「もう少し待てば株価が戻るかもしれない」という希望的観測は、さらなる損失拡大を招く危険な考え方です。 [1] 「損切り千両」という相場の格言があるように、早めに小さな損失を確定させることが、結果的に大きな価値(千両)を持つという意味です。 [4]

トレードを始める前に、「この価格まで下がったら、自分の判断が間違っていたと認めて潔く損切りする」というラインを必ず決めておきましょう。 [2, 6] そして、その価格になったら感情を挟まず、機械的に実行することが大切です。 [6] 証券会社の「逆指値注文」を使えば、指定した価格に達すると自動で売り注文を出してくれるため、損切りの徹底に非常に役立ちます。 [2, 26]

【実践編】ポジションサイズの計算方法

では、具体的に「許容損失額」と「損切り」を使って、どれくらいの株数を買えばよいのか(=ポジションサイズ)を計算する方法を解説します。この計算をマスターすれば、無謀な取引を確実に防ぐことができます。 [28, 30]

ポジションサイズ 計算式 図解

ステップ1:許容損失額を計算する

まず、先ほど決めた許容損失率(例:2%)を使って、1取引あたりの具体的な損失許容額(円)を計算します。

許容損失額(円) = 投資資金総額 × 許容損失率(%)

例:投資資金100万円、許容損失率2% → 許容損失額は20,000円

ステップ2:損切り幅を決める

次に、買う予定の銘柄について、エントリー価格(買値)からどこまで逆行したら損切りするかを決めます。この値幅が「損切り幅」です。損切り幅は、チャート上の重要な安値や、後述するATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)などを参考に、根拠を持って設定します。

1株あたりの損失許容額(円) = エントリー価格 - 損切り価格

例:株価2,000円の銘柄を買い、1,900円を損切りラインに設定 → 1株あたりの損失許容額は100円

ステップ3:適切なポジションサイズ(株数)を計算する

最後に、ステップ1で計算した「許容損失額」を、ステップ2で決めた「1株あたりの損失許容額」で割ることで、購入すべき株数が決まります。 [23, 28]

購入すべき株数 = 許容損失額(円) ÷ 1株あたりの損失許容額(円)

【計算例】
上記の例を当てはめると、
20,000円 ÷ 100円 = 200株

この計算により、投資資金100万円の人が、株価2,000円の銘柄を損切り1,900円で取引する場合、200株までなら許容リスク(2%)の範囲内で取引できる、ということが分かります。もし、この取引で損切りになったとしても、損失は 100円/株 × 200株 = 20,000円 となり、計画通りのリスクに収まります。

【応用編】ボラティリティを考慮したリスク管理(ATRの活用)

銘柄や相場状況によって、価格の変動の大きさ(ボラティリティ)は異なります。値動きが激しい銘柄で損切り幅を狭く設定しすぎると、意味のない小さな値動きですぐに損切りにかかってしまうことがあります。そこで役立つのがATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)というテクニカル指標です。 [7, 24]

ATR テクニカル指標 チャート

ATRとは?

ATRは、一定期間の平均的な値動きの幅を示してくれる指標です。 [7] 例えば、日足チャートでATRの値が「50」と表示されていれば、その銘柄は最近、1日あたり平均して50円程度の値動きがある、ということが分かります。ATRはトレンドの方向性は示しませんが、相場の「体温」を測るためのツールとして非常に有効です。 [20]

ATRを使った損切り幅の設定

多くのトレーダーは、このATRを損切り幅の目安として活用しています。 [12] 例えば、以下のようなルールが考えられます。

  • エントリー価格から「ATRの2倍」の値を引いた価格を損切りラインとする [7]

ATRが50円であれば、50円 × 2 = 100円を損切り幅の目安にします。こうすることで、その銘柄の普段の値動きを考慮した、合理的な損切りラインを設定しやすくなります。ボラティリティが高い(ATRが大きい)銘柄では損切り幅が自動的に広くなり、逆にボラティリティが低い(ATRが小さい)銘柄では狭くなります。 [7, 20]

重要なのは、損切り幅をATRに応じて広げた場合、前述のポジションサイズ計算式に当てはめると、購入できる株数は自然と少なくなるということです。これにより、値動きが激しい相場でも、1トレードあたりの損失リスク(例:資金の2%)は一定に保たれます。 [25]

まとめ:ルールに基づいた資金管理で着実な資産形成を

株式投資で長期的に成功するためには、派手な利益を追い求めるよりも、地道に損失をコントロールし続けることが何よりも重要です。 [3, 9, 11] 今回の記事で解説したポイントを改めてまとめます。

  • 許容損失を決める:まず、1回の取引で失ってもよい損失を「投資資金の1~2%」など、具体的な割合で決めましょう。 [8, 16]
  • 損小利大を意識する:リスクリワードレシオは常に1:2以上を目指し、損失よりも大きな利益を狙う計画を立てましょう。 [34, 35]
  • 損切りは絶対:事前に決めた損切りラインは、感情を排して機械的に実行します。これが資金を守るための生命線です。 [1, 5]
  • ポジションサイズを計算する:「許容損失額 ÷ 1株あたりの損失額」の計算式で、常にリスクに基づいた適切な株数を取引しましょう。 [28]
  • ボラティリティに適応する:ATRなどの指標を参考に、相場の状況に合わせて損切り幅やポジションサイズを調整する柔軟性を持ちましょう。 [7, 20]

これらのルールを決め、そして何よりも厳格に守り続ける規律が、あなたを大きな失敗から守り、着実な資産形成へと導いてくれるはずです。 [4, 6] 最初は難しく感じるかもしれませんが、一つ一つの取引で意識して実践することで、必ず身についていきます。ぜひ、今日からあなたの投資に資金管理の考え方を取り入れてみてください。