配当生活への第一歩!初心者向け高配当株の選び方とおすすめ5銘柄
株式投資を通じてコツコツと配当金を受け取り、将来的に「配当生活」を送ることを目指す方が増えています。近年、日本株市場でも配当利回りが3%を超える大手企業が増加し、低金利時代の預金や債券と比較してその魅力が高まっています。しかし、株式の配当金は銀行預金の利子とは異なり、企業の業績によっては減額されたり(減配)、無くなったり(無配)するリスクがあることを理解しておく必要があります。
この記事では、株式投資の初心者の方向けに、「高配当株」の基本的な知識から、具体的な選び方までを丁寧に解説します。配当利回りの計算方法、減配リスクの見極め方、そして日本株と米国株から厳選したおすすめ銘柄まで、わかりやすくご紹介します。
配当利回りとは?基本の計算方法とその意味
配当利回りとは、現在の株価に対して1年間でどれくらいの配当金を受け取れるかを示す割合(パーセンテージ)のことです。投資した金額に対して、年間に何%のリターンを配当金だけで得られるか、という指標になります。計算式は非常にシンプルです。
配当利回り(%)= 1株あたりの年間配当金 ÷ 現在の株価 × 100
例えば、ある企業の株価が2,000円で、1株あたりの年間配当金が80円だった場合、配当利回りは「80円 ÷ 2,000円 × 100 = 4.0%」となります。
一般的にこの数値が高いほど、投資元本に対して得られる配当収入が大きくなるため魅力的とされます。ただし、後述するように、単に利回りが高いという理由だけで投資を決めるのは危険です。投資の世界で使われる配当利回りには、前期の実績に基づく「実績配当利回り」と、企業が発表する今期の業績予想に基づく「予想配当利回り」の2種類がありますが、通常は将来の収益性を重視するため後者の「予想配当利回り」が参考にされます。
高配当株に潜む「減配リスク」と見極め方
高い配当利回りは魅力的ですが、投資初心者が必ず理解しておくべき最大のデメリットが「減配リスク」です。減配とは、企業が支払う配当金を減らすことで、最悪の場合は配当がゼロになる「無配」もあります。利回り5%を期待して投資したのに、翌年に配当が半分になれば実質的な利回りは2.5%に低下し、さらに減配を嫌気した投資家たちの売りによって株価自体も大きく下落する可能性があります。
では、この減配リスクを避けるためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
配当利回りが高すぎる銘柄に要注意
まず、配当利回りが異常に高い銘柄には注意が必要です。ランキング上位には利回り7%を超えるような銘柄も見られますが、一見すると魅力的でも警戒が必要です。経験則として、極端に高い利回りの銘柄は、業績不振による株価の急落が原因で、結果的に利回りが高く見えているだけのケースが少なくありません。このような銘柄は、翌期以降に業績がさらに悪化し、減配に至る可能性が高いと言えます。
配当性向と業績動向をチェック
減配リスクを判断する上で重要な指標が「配当性向」です。配当性向とは、企業がその年に稼いだ利益(当期純利益)のうち、何%を配当金の支払いに充てたかを示す割合です。
配当性向が高すぎる(例えば80%~100%超)場合、利益のほとんどを配当に回していることになり、少しでも業績が悪化すると現在の配当水準を維持できなくなる恐れがあります。赤字にもかかわらず配当を出している(配当性向がマイナス)企業は、将来の財務悪化リスクが非常に高いため、避けるべきでしょう。
また、企業の業績が景気の波に大きく左右される「景気敏感株(海運、鉄鋼など)」は、好況期には高配当でも、不況期には大幅な減配に陥りやすい傾向があります。長期的に安定した配当を期待するなら、業績が安定している企業を選ぶことが重要です。
減配リスクを抑える銘柄選びのヒント
減配リスクを下げ、安定した配当収益を目指すためには、以下のポイントを意識して銘柄を選ぶと良いでしょう。
- 収益基盤が安定した大型優良企業か?: 時価総額が大きく、業界内で確固たる地位を築いている企業は、収益力や財務基盤が安定していることが多いです。
- 利益率が高く、財務は健全か?: 本業でしっかりと利益を上げており(高い営業利益率)、借金が過剰でない(低い有利子負債比率、高い自己資本比率)企業は、不況への耐性があります。
- 景気に左右されにくい事業内容か?: 通信、食品、医薬品、社会インフラといった「ディフェンシブ株」は、景気後退期でも業績が落ちにくく、配当の安定性が高い傾向にあります。
- 株主還元に積極的な経営方針か?: 経営陣が「減配せず、配当を維持または増やす(累進配当)」といった方針を明確に掲げている企業は、信頼性が高いと言えます。
投資候補として注目の高配当株5選(日本株&米国株)
ここでは、これまでのポイントを踏まえ、投資初心者の方でも検討しやすい具体的な高配当銘柄を日本株3つ、米国株2つ紹介します。いずれも比較的安定した業績と配当実績を持つ企業です。
1. 日本たばこ産業(JT)【2914】
国内たばこ事業で圧倒的なシェアを誇るJTは、個人投資家に絶大な人気を誇る高配当株の代表格です。 長年にわたり高い株主還元を続けており、現在の予想配当利回りは約4.6%前後と非常に高水準です。 JTは「配当性向75%を目安」とする明確な株主還元方針を掲げており、安定したキャッシュ創出力がその高配当を支えています。 近年は減配しない「累進配当」政策は採用していませんが、 経営方針として安定配当への意識は高く、配当生活を目指す投資家にとってポートフォリオの軸となりうる銘柄です。
2. 積水ハウス【1928】
日本を代表する大手住宅メーカーである積水ハウスも、安定高配当株として人気です。住宅という生活に不可欠な事業を手掛けており、業績は比較的安定しています。同社の大きな魅力は、株主還元への強いコミットメントです。2026年1月期で14期連続となる増配を予定しており、その実績は投資家に安心感を与えます。 さらに「年間配当金の下限」を設定するなど、減配しにくい方針を明確にしています。 現在の予想配当利回りは約4.5%と魅力的な水準にあり、 安定した増配を続けながら長期的に資産を形成したい投資家に適した銘柄です。
3. 日本電信電話(NTT)【9432】
国内通信インフラの最大手であるNTTは、「鉄壁のディフェンシブ銘柄」として知られています。その最大の魅力は、圧倒的な配当の安定性です。2025年3月期で15期連続の増配を予定しており、事実上の「累進配当」を宣言しているに等しい強力な株主還元姿勢を示しています。 予想配当利回りは約3.4%と他の高配当株に比べるとやや見劣りしますが、その分、減配リスクは極めて低いと考えられます。 2023年には株式分割を行い、少額から投資しやすくなった点も初心者には嬉しいポイントです。 配当をもらいながら、安心して長期保有したいと考える投資家の第一候補となる銘柄でしょう。
4. アルトリア・グループ(MO)※米国株
アルトリア・グループは、たばこブランド「マールボロ」などを展開する米国最大のたばこメーカーです。米国株の中でも屈指の高配当銘柄として知られ、予想配当利回りは7%前後と非常に高い水準です。 何より特筆すべきは、50年以上にわたって増配を続けてきた「配当王」としての実績です。 たばこ事業は規制や健康志向の高まりといった逆風に晒されていますが、圧倒的なブランド力と価格決定力によって安定したキャッシュを生み出し、それを株主還元に充てています。高いインカムゲインを狙うなら、ポートフォリオに加えたい代表的な米国高配当株です。
5. ファイザー(PFE)※米国株
ファイザーは、新型コロナウイルスワクチンで一躍有名になった世界的な製薬会社です。医薬品セクターは代表的なディフェンシブ業種であり、安定したキャッシュフローが魅力です。コロナ特需の反動で株価が調整した結果、予想配当利回りは6%台後半まで上昇しており、高配当株としての魅力が増しています。 2009年に一度減配したものの、その後は10年以上にわたり連続で増配を続けており、株主還元への意識も高い企業です。 新薬開発のリスクは伴いますが、強力な開発パイプラインと財務基盤を持つファイザーは、長期的な視点で魅力的な高配当・ディフェンシブ銘柄と言えるでしょう。
初心者が高配当株を選ぶ際の注意点
最後に、高配当株投資を始める初心者が押さえておくべき重要なポイントを2つ紹介します。
1. 銘柄分散の重要性
高配当株投資においても「分散投資」は鉄則です。どれだけ魅力的な銘柄でも、一つの企業に集中投資してしまうと、その企業が予期せぬ業績悪化で減配した場合、資産全体が大きなダメージを受けてしまいます。業種や国(日本株と米国株など)を分散させることで、特定のリスクを軽減し、ポートフォリオ全体の配当収入を安定させることができます。最初は数銘柄からでも構いませんが、将来的には10銘柄以上に分散させることを目指しましょう。個別株選びが難しいと感じる場合は、複数の高配当株をパッケージ化した「高配当株ETF(上場投資信託)」を活用するのも有効な手段です。
2. 税制優遇制度(NISA)の活用
配当生活を目指す上で、NISA(少額投資非課税制度)の活用は必須です。通常、株式の配当金には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で得た配当金にはこの税金がかかりません。 例えば、年間10万円の配当金を受け取った場合、通常口座では手取りが約8万円になりますが、NISA口座なら10万円をまるまる受け取ることができます。この差は長期的に見ると非常に大きく、配当金を再投資に回すことで、資産が雪だるま式に増える「複利効果」を最大化できます。特に2024年から始まった新NISAは非課税枠が大幅に拡大され、高配当株投資との相性は抜群です。
本記事では、「配当生活の第一歩」として、高配当株の選び方からおすすめ銘柄までを解説しました。高配当株投資は、定期的な収入を得ながら資産を育てることができる魅力的な手法です。しかし、高い利回りの裏にあるリスクを正しく理解し、長期的な視点で分散投資を心がけることが成功の鍵となります。この記事を参考に、ぜひあなたの資産形成に高配当株投資を取り入れてみてください。