不況・災害に強い「ディフェンシブ株」とは?初心者向けに選び方からポートフォリオ構築まで徹底解説

不況・災害に強い「ディフェンシブ株」とは?初心者向けに選び方からポートフォリオ構築まで徹底解説

株式投資に興味はあるけれど、「景気が悪くなったらどうしよう」「災害が起きたら株価は暴落するんじゃ…」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんな投資の不安に寄り添ってくれるのが「ディフェンシブ株」という存在です。今回は、投資初心者の方でも安心して一歩を踏み出せるように、不況や災害時でも頼りになるディフェンシブ株の基本から、具体的な探し方、そして安定した資産形成を目指すためのポートフォリオ戦略まで、わかりやすく解説していきます。

第1章:ディフェンシブ株とは?守りの投資の基本

まずは、「ディフェンシブ株」がどのようなものなのか、基本から理解を深めましょう。

ディフェンシブ株の定義:景気に左右されにくい「守りの株」

ディフェンシブ株とは、その名の通り「防御的な(Defensive)」性質を持つ株式のことです。 [7, 8] 景気の良し悪しに関わらず、業績が安定している企業の株を指します。 [2, 9] なぜなら、これらの企業が提供する商品やサービスは、私たちの生活に必要不可欠なものがほとんどだからです。 [2, 7]

例えば、景気が悪くなったからといって、急に食事の回数を減らしたり、病気になっても薬を飲むのをやめたり、電気や水道を使わなくなったりすることはありませんよね。このように、不況下でも需要が落ち込みにくいため、売上が安定し、株価も比較的下落しにくいという特徴があります。 [2, 19, 23] この安定感から、市場全体が不安定なときや景気後退が懸念される局面で、投資家たちの「避難先」として注目されることが多いのです。 [9, 23]

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「景気敏感株」との違い

ディフェンシブ株の対極に位置するのが「景気敏感株(シクリカル銘柄)」です。 [2, 8] こちらは景気の波に業績が大きく左右される企業の株を指します。

具体的には、自動車、鉄鋼、化学、不動産、旅行関連などの業種が挙げられます。 [2] 好景気のときは人々の消費意欲が高まり、企業の設備投資も活発になるため、これらの企業の業績は大きく伸び、株価も上昇しやすくなります。しかし、ひとたび不景気になると、業績は急速に悪化し、株価も大きく下落する傾向があります。 [8]

以下の表で、両者の違いを比較してみましょう。

特徴 ディフェンシブ株 景気敏感株(シクリカル銘柄)
景気変動への耐性 強い(影響を受けにくい) 弱い(影響を受けやすい)
主な業種 食品、医薬品、電力・ガス、通信、鉄道 [2, 9] 自動車、鉄鋼、化学、不動産、旅行 [2]
値動きの傾向 安定的で、比較的値動きが小さい [20] 値動きが大きく、変動が激しい
投資に適した局面 景気後退期、市場の先行き不透明な時期 景気拡大期、市場が好調な時期
期待されるリターン 安定的な配当収入(インカムゲイン)が中心 [19] 大きな値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できる

投資の初心者や、大きなリスクを取りたくない安定志向の方は、まずディフェンシブ株からポートフォリオ(資産の組み合わせ)に組み入れてみるのがおすすめです。

第2章:ディフェンシブ株の代表的な業種

では、具体的にどのような業種がディフェンシブ株に分類されるのでしょうか。私たちの生活に身近な企業が多く含まれています。

  • 食品・飲料:景気に関わらず人々が毎日消費するため、売上が安定しています。 [23] 味の素(2802)や日清食品ホールディングス(2897)などが代表例です。 [10, 22]
  • 医薬品・ヘルスケア:病気や健康への関心は景気に左右されにくく、安定した需要が見込めます。 [2, 23] 第一三共(4568)や武田薬品工業(4502)などが挙げられます。 [12, 28]
  • 電力・ガス・水道(公益事業):生活に必須のライフラインであり、国からの規制もあって価格や供給が安定しています。 [19] 業績が景気変動の影響を受けにくく、倒産リスクも低いのが特徴です。 [23] 関西電力(9503)などがこのカテゴリーに含まれます。 [18]
  • 情報・通信:スマートフォンやインターネットは今や生活インフラの一部です。通信料という安定した収益源があり、不況下でも解約する人は少ないため、業績は堅調に推移します。 [2, 9] NTT(9432)やKDDI(9433)が代表的です。 [10, 14]
  • 陸運(鉄道):通勤や通学など、人々の日常的な移動を支える鉄道もディフェンシブな性質を持っています。 [9] 特に、安定した利用者が多い私鉄は景気の影響を受けにくいとされています。 [14]

これらの業種に共通するのは、「生活必需性」「需要の安定性」です。災害発生時においても、食料の供給やライフラインの復旧は最優先事項となるため、これらの企業の重要性はさらに高まります。

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第3章:【実践編】初心者向けディフェンシブ株の見つけ方

「ディフェンシブ株が良いのはわかったけど、どうやって探せばいいの?」という疑問にお答えします。証券会社のウェブサイトやアプリで簡単に確認できる、3つの基本的な指標に注目してみましょう。

重要な3つの株価指標:PER・PBR・ROE

企業の株価が割安か、また効率的に利益を出せているかなどを判断するための「モノサシ」が株価指標です。ここでは特に重要な3つを紹介します。

  1. PER(株価収益率):株価の割安度がわかる

    PERは「Price Earnings Ratio」の略で、現在の株価がその会社の「1株あたりの利益」の何倍かを示す指標です。 [13, 21] 一般的に、この数値が低いほど、会社の利益に対して株価が「割安」と判断されます。 [21] 業種によって平均的なPERは異なりますが、一つの目安として15倍以下だと割安と評価されることが多いです。 [24] ただし、成長期待が高い企業はPERが高くなる傾向があるため、同業他社と比較することが重要です。 [21, 30]

  2. PBR(株価純資産倍率):会社の資産から見た割安度がわかる

    PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、現在の株価がその会社の「1株あたりの純資産」の何倍かを示す指標です。 [13, 16] 純資産とは、会社が持っている総資産から負債を引いたもので、いわば会社の「解散価値」です。PBRが1倍ということは、株価と会社の解散価値が同じということ。もし1倍を下回っていれば、その会社の株をすべて買い占めて解散させた方が儲かる、という計算になり、株価が非常に「割安」であると判断できます。 [24] ディフェンシブ株のような安定企業を探す際には、PBR1倍台、あるいはそれを下回る銘柄が候補になります。

  3. ROE(自己資本利益率):お金を稼ぐ効率がわかる

    ROEは「Return On Equity」の略で、会社が株主から集めたお金(自己資本)を使って、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。 [13, 16] この数値が高いほど、「稼ぐ力」が強い優秀な会社だと評価できます。 [16] 一般的には、ROEが8%~10%を超えていると優良企業であると判断されることが多いです。安定的に高いROEを維持している企業は、持続的に成長する力があると考えられます。

これらの指標は、楽天証券やSBI証券といったネット証券のアプリや、Yahoo!ファイナンスなどの情報サイトで、個別銘柄のページを開けば簡単に確認できます。

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配当利回りと連続増配にも注目!

ディフェンシブ株投資の魅力の一つが、安定した配当金です。配当金とは、企業が得た利益の一部を株主に還元するお金のことです。

  • 配当利回り:株価に対する年間の配当金の割合を示す指標で、「年間配当金 ÷ 株価 × 100」で計算できます。例えば、株価1000円の株が年間30円の配当を出す場合、配当利回りは3%です。高配当株は、株価が下落しても配当を受け取れるため、損失を和らげるクッションの役割を果たします。 [10] 一般的に、配当利回りが3%を超えると高配当と言われます。 [26]
  • 連続増配:長年にわたって配当金を増やし続けている企業は、業績が安定しており、株主への還元意識も高い優良企業である可能性が高いです。 [42] 例えば、花王(4452)は30年以上にわたって増配を続けていることで知られています。 [27, 42] このような企業は、長期的に安心して保有できる銘柄の候補となります。

第4章:日本の代表的なディフェンシブ銘柄 具体例

ここまでのポイントを踏まえて、日本を代表するディフェンシブ銘柄の具体例をいくつか見ていきましょう。※特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

銘柄(コード) 業種 ディフェンシブとされる理由
花王 (4452) 化学(日用品) 洗剤や化粧品など生活必需品が主力。不況でも需要が安定。35期連続増配の実績(2024年時点)があり、株主還元に積極的。 [17, 25, 27]
NTT (9432) 情報・通信 国内通信インフラのガリバー。安定した通信料収入が基盤。連続増配を続けており、高配当銘柄としても人気が高い。 [44]
関西電力 (9503) 電気・ガス 関西エリアの生活を支える電力インフラ。規制に守られた安定的な収益構造。原発の稼働により燃料費高騰の影響を受けにくい。 [18, 41] 安定配当を継続している。 [35, 39, 43]
第一三共 (4568) 医薬品 人の命に関わる医薬品は景気に左右されない典型的なディフェンシブ分野。抗がん剤「エンハーツ」などの新薬開発で成長性も期待される。 [12, 29, 31, 40] 増配にも積極的。 [36]

第5章:守りを固める!ディフェンシブ株を中心としたポートフォリオ戦略

投資で大切なのは、一つの銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に分散してリスクを抑えることです。この資産の組み合わせを「ポートフォリオ」と呼びます。

分散投資の基本:「卵は一つのカゴに盛るな」

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があります。もし一つのカゴにすべての卵を入れていて、そのカゴを落としてしまったら、すべての卵が割れてしまうかもしれません。しかし、複数のカゴに分けておけば、一つを落としても他のカゴの卵は無事です。投資もこれと同じで、異なる値動きをする資産(ディフェンシブ株、成長株、債券など)や、異なる業種の株に分散させることで、ある銘柄が値下がりしても、他の銘柄の値上がりでカバーでき、全体として大きな損失を防ぐことができます。 [34]

時間も分散する「ドルコスト平均法」

投資する「タイミング」を分散する手法も有効です。その代表が「ドルコスト平均法」です。 [3, 4] これは、毎月1万円ずつなど、定期的に一定の金額で同じ金融商品を買い付けていく方法です。 [3, 5, 6]

この方法のメリットは、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買うことになるため、平均購入単価を平準化できる点です。 [3, 6] 「一番安いタイミングで買いたい」と思うのが人情ですが、そのタイミングを正確に予測するのはプロでも至難の業です。ドルコスト平均法なら、感情に左右されず機械的に投資を続けることで、高値掴みのリスクを減らすことができます。 [11] まさに、長期的な資産形成を目指す初心者の方にぴったりの投資法です。

新NISAを活用して、効率的に資産形成

2024年から始まった新NISAは、ディフェンシブ株への長期投資と非常に相性が良い制度です。新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあり、年間最大360万円までの投資で得た利益(配当金や値上がり益)が非課税になります。 [37, 44] ディフェンシブ株は安定した配当を出す銘柄が多いため、その配当金を非課税で受け取れるメリットは非常に大きいです。 [28, 32, 33] ドルコスト平均法での積立投資は「つみたて投資枠」で、個別のディフェンシブ株への投資は「成長投資枠」で行うなど、両方の枠をうまく活用して、守りを固めながら効率的な資産形成を目指しましょう。

第6章:ディフェンシブ株投資の注意点とリスク

ここまでディフェンシブ株のメリットを多く紹介してきましたが、もちろん注意すべき点もあります。

  • 大きな値上がりは期待しにくい:安定していることの裏返しで、景気敏感株のように株価が数倍になるような急成長はあまり期待できません。 [19] 市場全体が活況のときは、他の成長株に比べてパフォーマンスが見劣りすることもあります。 [34]
  • 金利変動のリスク:一般的に、世の中の金利が上昇すると、相対的に配当株の魅力が薄れることがあります。より安全な国債などの利回りが上がるためです。
  • 個別企業のリスク:どんなに安定した業種でも、個別の企業が不祥事を起こしたり、経営判断を誤ったりするリスクはゼロではありません。一つの銘柄に固執せず、複数の銘柄に分散投資することが重要です。

まとめ

今回は、不況や災害時にも心強い「ディフェンシブ株」について、その基本から選び方、ポートフォリオ戦略までを解説しました。

最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

  • ディフェンシブ株は、景気に左右されにくい「守り」の株。食品、医薬品、通信、電力などが代表的な業種。
  • 銘柄選びでは「PER」「PBR」「ROE」といった指標をチェック。割安で、効率的に稼ぐ力のある企業を見つけよう。
  • 「配当利回り」と「連続増配」も重要な判断基準。安定したインカムゲインが期待できる。
  • 一つの銘柄に集中せず、「分散投資」でポートフォリオを組むことが鉄則。
  • 「ドルコスト平均法」や「新NISA」を活用して、賢く長期的な資産形成を。

ディフェンシブ株は、市場の変動に一喜一憂することなく、心穏やかに資産を育てていきたいと考える投資家にとって、最適な選択肢の一つです。この記事を参考に、あなたも「守りの投資」から、資産形成の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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不況・災害に強い「ディフェンシブ株」とは?初心者向けに選び方からポートフォリオ構築まで徹底解説

株式投資に興味はあるけれど、「景気が悪くなったらどうしよう」「災害が起きたら株価は暴落するんじゃ…」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんな投資の不安に寄り添ってくれるのが「ディフェンシブ株」という存在です。今回は、投資初心者の方でも安心して一歩を踏み出せるように、不況や災害時でも頼りになるディフェンシブ株の基本から、具体的な探し方、そして安定した資産形成を目指すためのポートフォリオ戦略まで、わかりやすく解説していきます。

第1章:ディフェンシブ株とは?守りの投資の基本

まずは、「ディフェンシブ株」がどのようなものなのか、基本から理解を深めましょう。

ディフェンシブ株の定義:景気に左右されにくい「守りの株」

ディフェンシブ株とは、その名の通り「防御的な(Defensive)」性質を持つ株式のことです。 景気の良し悪しに関わらず、業績が安定している企業の株を指します。 なぜなら、これらの企業が提供する商品やサービスは、私たちの生活に必要不可欠なものがほとんどだからです。

例えば、景気が悪くなったからといって、急に食事の回数を減らしたり、病気になっても薬を飲むのをやめたり、電気や水道を使わなくなったりすることはありませんよね。このように、不況下でも需要が落ち込みにくいため、売上が安定し、株価も比較的下落しにくいという特徴があります。 この安定感から、市場全体が不安定なときや景気後退が懸念される局面で、投資家たちの「避難先」として注目されることが多いのです。

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「景気敏感株」との違い

ディフェンシブ株の対極に位置するのが「景気敏感株(シクリカル銘柄)」です。 こちらは景気の波に業績が大きく左右される企業の株を指します。

具体的には、自動車、鉄鋼、化学、不動産、旅行関連などの業種が挙げられます。 好景気のときは人々の消費意欲が高まり、企業の設備投資も活発になるため、これらの企業の業績は大きく伸び、株価も上昇しやすくなります。しかし、ひとたび不景気になると、業績は急速に悪化し、株価も大きく下落する傾向があります。

以下の表で、両者の違いを比較してみましょう。

特徴 ディフェンシブ株 景気敏感株(シクリカル銘柄)
景気変動への耐性 強い(影響を受けにくい) 弱い(影響を受けやすい)
主な業種 食品、医薬品、電力・ガス、通信、鉄道 自動車、鉄鋼、化学、不動産、旅行
値動きの傾向 安定的で、比較的値動きが小さい 値動きが大きく、変動が激しい
投資に適した局面 景気後退期、市場の先行き不透明な時期 景気拡大期、市場が好調な時期
期待されるリターン 安定的な配当収入(インカムゲイン)が中心 大きな値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できる

投資の初心者や、大きなリスクを取りたくない安定志向の方は、まずディフェンシブ株からポートフォリオ(資産の組み合わせ)に組み入れてみるのがおすすめです。

第2章:ディフェンシブ株の代表的な業種

では、具体的にどのような業種がディフェンシブ株に分類されるのでしょうか。私たちの生活に身近な企業が多く含まれています。

  • 食品・飲料:景気に関わらず人々が毎日消費するため、売上が安定しています。 味の素(2802)や日清食品ホールディングス(2897)などが代表例です。
  • 医薬品・ヘルスケア:病気や健康への関心は景気に左右されにくく、安定した需要が見込めます。 第一三共(4568)や武田薬品工業(4502)などが挙げられます。
  • 電力・ガス・水道(公益事業):生活に必須のライフラインであり、国からの規制もあって価格や供給が安定しています。 業績が景気変動の影響を受けにくく、倒産リスクも低いのが特徴です。 関西電力(9503)などがこのカテゴリーに含まれます。
  • 情報・通信:スマートフォンやインターネットは今や生活インフラの一部です。通信料という安定した収益源があり、不況下でも解約する人は少ないため、業績は堅調に推移します。 NTT(9432)やKDDI(9433)が代表的です。
  • 陸運(鉄道):通勤や通学など、人々の日常的な移動を支える鉄道もディフェンシブな性質を持っています。 特に、安定した利用者が多い私鉄は景気の影響を受けにくいとされています。

これらの業種に共通するのは、「生活必需性」「需要の安定性」です。災害発生時においても、食料の供給やライフラインの復旧は最優先事項となるため、これらの企業の重要性はさらに高まります。

スーパーマーケット 食料品 陳列

第3章:【実践編】初心者向けディフェンシブ株の見つけ方

「ディフェンシブ株が良いのはわかったけど、どうやって探せばいいの?」という疑問にお答えします。証券会社のウェブサイトやアプリで簡単に確認できる、3つの基本的な指標に注目してみましょう。

重要な3つの株価指標:PER・PBR・ROE

企業の株価が割安か、また効率的に利益を出せているかなどを判断するための「モノサシ」が株価指標です。ここでは特に重要な3つを紹介します。

  1. PER(株価収益率):株価の割安度がわかる

    PERは「Price Earnings Ratio」の略で、現在の株価がその会社の「1株あたりの利益」の何倍かを示す指標です。 一般的に、この数値が低いほど、会社の利益に対して株価が「割安」と判断されます。 業種によって平均的なPERは異なりますが、一つの目安として15倍以下だと割安と評価されることが多いです。 ただし、成長期待が高い企業はPERが高くなる傾向があるため、同業他社と比較することが重要です。

  2. PBR(株価純資産倍率):会社の資産から見た割安度がわかる

    PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、現在の株価がその会社の「1株あたりの純資産」の何倍かを示す指標です。 純資産とは、会社が持っている総資産から負債を引いたもので、いわば会社の「解散価値」です。PBRが1倍ということは、株価と会社の解散価値が同じということ。もし1倍を下回っていれば、その会社の株をすべて買い占めて解散させた方が儲かる、という計算になり、株価が非常に「割安」であると判断できます。 ディフェンシブ株のような安定企業を探す際には、PBR1倍台、あるいはそれを下回る銘柄が候補になります。

  3. ROE(自己資本利益率):お金を稼ぐ効率がわかる

    ROEは「Return On Equity」の略で、会社が株主から集めたお金(自己資本)を使って、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。 この数値が高いほど、「稼ぐ力」が強い優秀な会社だと評価できます。 一般的には、ROEが8%~10%を超えていると優良企業であると判断されることが多いです。安定的に高いROEを維持している企業は、持続的に成長する力があると考えられます。

これらの指標は、楽天証券やSBI証券といったネット証券のアプリや、Yahoo!ファイナンスなどの情報サイトで、個別銘柄のページを開けば簡単に確認できます。

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配当利回りと連続増配にも注目!

ディフェンシブ株投資の魅力の一つが、安定した配当金です。配当金とは、企業が得た利益の一部を株主に還元するお金のことです。

  • 配当利回り:株価に対する年間の配当金の割合を示す指標で、「年間配当金 ÷ 株価 × 100」で計算できます。例えば、株価1000円の株が年間30円の配当を出す場合、配当利回りは3%です。高配当株は、株価が下落しても配当を受け取れるため、損失を和らげるクッションの役割を果たします。 一般的に、配当利回りが3%を超えると高配当と言われます。
  • 連続増配:長年にわたって配当金を増やし続けている企業は、業績が安定しており、株主への還元意識も高い優良企業である可能性が高いです。 例えば、花王(4452)は30年以上にわたって増配を続けていることで知られています。 このような企業は、長期的に安心して保有できる銘柄の候補となります。

第4章:日本の代表的なディフェンシブ銘柄 具体例

ここまでのポイントを踏まえて、日本を代表するディフェンシブ銘柄の具体例をいくつか見ていきましょう。※特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

銘柄(コード) 業種 ディフェンシブとされる理由
花王 (4452) 化学(日用品) 洗剤や化粧品など生活必需品が主力。不況でも需要が安定。35期連続増配の実績(2024年時点)があり、株主還元に積極的。
NTT (9432) 情報・通信 国内通信インフラのガリバー。安定した通信料収入が基盤。連続増配を続けており、高配当銘柄としても人気が高い。
関西電力 (9503) 電気・ガス 関西エリアの生活を支える電力インフラ。規制に守られた安定的な収益構造。原発の稼働により燃料費高騰の影響を受けにくい。 安定配当を継続している。
第一三共 (4568) 医薬品 人の命に関わる医薬品は景気に左右されない典型的なディフェンシブ分野。抗がん剤「エンハーツ」などの新薬開発で成長性も期待される。 増配にも積極的。

第5章:守りを固める!ディフェンシブ株を中心としたポートフォリオ戦略

投資で大切なのは、一つの銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に分散してリスクを抑えることです。この資産の組み合わせを「ポートフォリオ」と呼びます。

分散投資の基本:「卵は一つのカゴに盛るな」

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があります。もし一つのカゴにすべての卵を入れていて、そのカゴを落としてしまったら、すべての卵が割れてしまうかもしれません。しかし、複数のカゴに分けておけば、一つを落としても他のカゴの卵は無事です。投資もこれと同じで、異なる値動きをする資産(ディフェンシブ株、成長株、債券など)や、異なる業種の株に分散させることで、ある銘柄が値下がりしても、他の銘柄の値上がりでカバーでき、全体として大きな損失を防ぐことができます。

時間も分散する「ドルコスト平均法」

投資する「タイミング」を分散する手法も有効です。その代表が「ドルコスト平均法」です。 これは、毎月1万円ずつなど、定期的に一定の金額で同じ金融商品を買い付けていく方法です。

この方法のメリットは、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買うことになるため、平均購入単価を平準化できる点です。 「一番安いタイミングで買いたい」と思うのが人情ですが、そのタイミングを正確に予測するのはプロでも至難の業です。ドルコスト平均法なら、感情に左右されず機械的に投資を続けることで、高値掴みのリスクを減らすことができます。 まさに、長期的な資産形成を目指す初心者の方にぴったりの投資法です。

新NISAを活用して、効率的に資産形成

2024年から始まった新NISAは、ディフェンシブ株への長期投資と非常に相性が良い制度です。新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあり、年間最大360万円までの投資で得た利益(配当金や値上がり益)が非課税になります。
ディフェンシブ株は安定した配当を出す銘柄が多いため、その配当金を非課税で受け取れるメリットは非常に大きいです。 ドルコスト平均法での積立投資は「つみたて投資枠」で、個別のディフェンシブ株への投資は「成長投資枠」で行うなど、両方の枠をうまく活用して、守りを固めながら効率的な資産形成を目指しましょう。

第6章:ディフェンシブ株投資の注意点とリスク

ここまでディフェンシブ株のメリットを多く紹介してきましたが、もちろん注意すべき点もあります。

  • 大きな値上がりは期待しにくい:安定していることの裏返しで、景気敏感株のように株価が数倍になるような急成長はあまり期待できません。 市場全体が活況のときは、他の成長株に比べてパフォーマンスが見劣りすることもあります。
  • 金利変動のリスク:一般的に、世の中の金利が上昇すると、相対的に配当株の魅力が薄れることがあります。より安全な国債などの利回りが上がるためです。
  • 個別企業のリスク:どんなに安定した業種でも、個別の企業が不祥事を起こしたり、経営判断を誤ったりするリスクはゼロではありません。一つの銘柄に固執せず、複数の銘柄に分散投資することが重要です。

まとめ

今回は、不況や災害時にも心強い「ディフェンシブ株」について、その基本から選び方、ポートフォリオ戦略までを解説しました。

最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

  • ディフェンシブ株は、景気に左右されにくい「守り」の株。食品、医薬品、通信、電力などが代表的な業種。
  • 銘柄選びでは「PER」「PBR」「ROE」といった指標をチェック。割安で、効率的に稼ぐ力のある企業を見つけよう。
  • 「配当利回り」と「連続増配」も重要な判断基準。安定したインカムゲインが期待できる。
  • 一つの銘柄に集中せず、「分散投資」でポートフォリオを組むことが鉄則。
  • 「ドルコスト平均法」や「新NISA」を活用して、賢く長期的な資産形成を。

ディフェンシブ株は、市場の変動に一喜一憂することなく、心穏やかに資産を育てていきたいと考える投資家にとって、最適な選択肢の一つです。この記事を参考に、あなたも「守りの投資」から、資産形成の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。