【初心者向け】米国配当貴族とは?日本の高配当株との違いや買い方を徹底解説
「株式投資を始めたいけど、どの銘柄を選べばいいかわからない」「安定した企業に長期的に投資して、着実に資産を増やしたい」と考えているビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。そんな方におすすめしたいのが、「米国配当貴族(べいこくはいとうきぞく)」と呼ばれる銘柄群です。この記事では、投資初心者にも分かりやすく、米国配当貴族の魅力から、日本の高配当株との違い、さらには具体的な購入方法まで、丁寧に解説していきます。
米国配当貴族(S&P 500 Dividend Aristocrats)とは?
まず、「米国配当貴族」とは何か、その定義から見ていきましょう。言葉の響きから、単に配当金が高いだけの銘柄をイメージするかもしれませんが、実はもっと厳しい基準をクリアした、選りすぐりの優良企業のことを指します。
厳しい基準をクリアしたエリート企業群
米国配当貴族とは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出している「S&P500配当貴族指数」を構成する銘柄のことです。 [3, 11] この指数に採用されるためには、以下の非常に厳しい条件をすべて満たす必要があります。 [3, 4]
- S&P500指数の構成銘柄であること [3]
- 25年以上、一度も減配(配当金を減らすこと)せず、毎年増配(配当金を増やすこと)を続けていること [3]
- 時価総額が30億米ドル以上であること [3]
- 直近3ヶ月の平均日次売買代金が500万米ドル以上であること [3]
S&P500とは、アメリカを代表する優良企業500社の株価を基に算出される株価指数で、これに選ばれるだけでも一流企業の証です。 [20] その中でもさらに「25年以上連続増配」という条件は極めてハードルが高く、ITバブルの崩壊やリーマンショック、近年のコロナ禍といった数々の経済危機を乗り越え、安定的に利益を出し、株主への還元を増やし続けてきたことを意味します。 [3] このため、配当貴族に選ばれる企業は、非常に安定した財務基盤と優れたビジネスモデルを持つ、エリート中のエリート企業と言えるでしょう。
ちなみに、さらに上のクラスとして、50年以上連続で増配を続ける企業は「配当王(Dividend King)」と呼ばれ、その数はさらに限られます。 [3]
どんな企業があるの?
2023年9月時点で、S&P500配当貴族指数には67銘柄が組み入れられています。 [3] その構成銘柄を見ると、私たちの生活に身近な企業が多く含まれているのが特徴です。
例えば、世界的な日用品メーカーのプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や、飲料大手のコカ・コーラ、ヘルスケア製品のジョンソン・エンド・ジョンソン、小売り大手のウォルマートなどが名を連ねています。 [3, 11] これらの企業は、景気の良し悪しに関わらず人々が日常的に利用する製品やサービスを提供している「生活必需品」セクターに属しており、安定した収益を上げやすい傾向があります。 [3, 31] これが、GAFAMに代表されるようなハイテク企業中心のS&P500指数とは大きく異なる点です。 [3]
「連続増配」は「高配当」とは限らない
ここで一つ注意点があります。それは、「配当貴族 = 必ずしも高配当ではない」ということです。配当利回り(株価に対する年間配当金の割合)は、株価が上昇すれば相対的に低くなります。配当貴族の銘柄は、増配を続ける安定性から投資家からの人気が高く、株価も上昇しやすい傾向があるため、結果として配当利回りが驚くほど高いわけではないケースも多いのです。 [3]
しかし、重要なのは目先の利回りの高さよりも、長期的に配当が増え続ける「増配力」です。長期保有することで、購入時の株価に対する実質的なリターン(Yield on Cost)は年々高まっていきます。安定した増配実績は、将来にわたってキャッシュフローを生み出し続ける企業の力強さの証明なのです。
米国配当貴族と日本の高配当株・連続増配株の違い
では、米国の配当貴族と、日本でよく話題になる「高配当株」や「連続増配株」とは何が違うのでしょうか。
株主還元の文化の違い
最大の違いは、企業の数です。米国では25年以上連続で増配している企業が60社以上存在するのに対し、日本では同条件を満たす企業はごくわずかです。 [3] 例えば、長年「日本唯一の配当貴族」と言われてきた花王は35年以上の連続増配を記録しています。 [10] 最近では、機械部品商社のSPKなども25年連続増配を達成し、三菱HCキャピタルや小林製薬なども20年を超える連続増配を続けています。 [10, 22]
しかし、その数は米国に遠く及びません。これは、米国企業が伝統的に「株主への利益還元」を経営の最重要課題の一つと捉えてきた文化が背景にあります。安定した配当と増配は、経営者の重要な責務と考えられているのです。
日本の「連続増配株」への注目の高まり
近年、日本でも株主還元への意識が高まり、連続増配を続ける企業が評価されるようになってきました。2023年には東京証券取引所が「日経連続増配株指数」の算出を開始し、10年以上連続で増配している企業にスポットライトが当たるようになりました。 [23] この指数には、先述の花王や三菱HCキャピタルのほか、KDDIやユニ・チャームといった有名企業も含まれています。 [7, 10]
「高配当株」と「連続増配株」の違いを理解しよう
投資初心者が混同しがちなのが「高配当株」と「連続増配株」です。
- 高配当株:現在の配当利回りが高い銘柄。一時的な好業績による特別配当や、株価が下落した結果として利回りが高くなっている場合も含まれる。将来、減配されるリスクも相対的に高い。
- 連続増配株(配当貴族):現在の利回りはそれほど高くなくても、長期間にわたって毎年配当を増やし続けてきた実績がある銘柄。業績の安定性が高く、長期的な配当収入の増加が期待できる。 [21]
どちらが良いというわけではありませんが、景気変動に強く、長期的な資産形成を目指すのであれば、過去の実績に裏打ちされた「連続増配株」、特にその頂点にいる「米国配当貴族」は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
【初心者向け】米国配当貴族銘柄を購入する4ステップ
「米国配当貴族に投資してみたいけど、海外の株なんてどうやって買えばいいの?」ご安心ください。今はネット証券を使えば、誰でも簡単に米国株投資を始められます。ここでは、具体的な手順を4つのステップに分けて解説します。
ステップ1:証券会社で外国株式取引口座を開設する
まずは、米国株を取り扱っている証券会社で口座を開設する必要があります。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの大手ネット証券なら、オンラインで簡単に手続きが完了します。 [6, 9] 口座開設は無料で、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証)があれば、数日から1週間程度で取引を開始できます。
新NISAの「成長投資枠」も活用しよう!
2024年から始まった新NISAでは、年間240万円までの「成長投資枠」で米国株を購入できます。 [25] NISA口座内で得た利益(値上がり益や配当金)には税金がかからないため、非常にお得です。 [25] 多くのネット証券がNISA口座での米国株売買手数料を無料にしているので、積極的に活用しましょう。 [24, 30]
ステップ2:購入資金を準備する(日本円を米ドルに両替)
米国株は米ドルで取引されるため、証券口座に入金した日本円を米ドルに両替する必要があります。 [21] この手続きも、利用するネット証券のサイトやアプリ内で簡単に行えます。「為替振替」や「円貨決済」といったサービスを利用しましょう。
両替時には「為替手数料」がかかりますが、ネット証券各社は手数料引き下げ競争を繰り広げており、無料のところも増えています。 [9, 30] 長期投資ではそれほど大きな影響はありませんが、コストは低いに越したことはありません。
ステップ3:買いたい銘柄を選んで注文する
いよいよ銘柄を選んで注文です。証券会社の取引画面で、買いたい企業の名前や「ティッカーシンボル」(例:コカ・コーラなら「KO」)を入力して検索します。
米国株は日本株と違い、1株から購入できるのが大きなメリットです。高価な銘柄でも少額から投資を始められます。注文方法は日本株と同じように、価格を指定する「指値注文」と、価格を指定しない「成行注文」が基本です。
米国市場が開いているのは日本時間の夜間(22:30~翌5:00頃 ※サマータイムあり)ですが、日中に指値注文を出しておけば、市場が開いたときに自動で発注されるので便利です。
ステップ4:知っておきたい注意点(為替リスクと税金)
最後に、米国株投資ならではの注意点を2つ押さえておきましょう。
1. 為替リスク
米国株はドル建ての資産なので、為替レートの変動が円換算での資産価値に影響します。例えば、株価が変わらなくても円高(1ドル=150円→130円)になれば円での評価額は減り、円安(1ドル=150円→170円)になれば増えます。 [24] これはリスクであると同時に、円資産しか持たないことのリスクを分散させる効果もあります。長期的な視点で捉えることが大切です。
2. 税金と二重課税
米国株の配当金には、まず米国内で10%が源泉徴収されます。 [5, 13] そして、その残りの金額に対して、日本国内でさらに20.315%が課税されます。 [5] このように、二つの国で税金がかかることを「二重課税」と呼びます。 [18]
しかし、この二重課税は「外国税額控除」という制度を利用することで、確定申告をすれば取り戻すことが可能です。 [5, 20] 確定申告と聞くと難しく感じるかもしれませんが、証券会社が発行する「年間取引報告書」を使えば手続きはそれほど複雑ではありません。払い過ぎた税金が還付されるメリットは大きいので、ぜひ挑戦してみましょう。
ただし、NISA口座で受け取った配当金は、外国税額控除の対象外となる点には注意が必要です。 [15, 28] NISAでは日本での課税(20.315%)は非課税になりますが、米国での源泉徴収(10%)はされたままとなり、これを取り戻すことはできません。 [25]
また、初めて米国株を取引する際には、「W-8BEN」という書類の提出を求められます。これは、自身が米国居住者ではないことを証明する書類で、これを提出することで米国の源泉徴収税率が30%から10%に軽減されます。オンラインで簡単に手続きできるので、忘れずに行いましょう。
まとめ:安定した資産形成の第一歩に
この記事では、米国配当貴族の基本的な知識から、日本の株式との違い、そして具体的な購入方法までを解説しました。長年にわたり増配を続ける「米国配当貴族」は、その安定性と成長性から、特に長期的な視点で資産形成を目指すビジネスパーソンにとって非常に魅力的な投資対象です。 [21, 33]
もちろん、株式投資である以上、元本割れのリスクや為替変動のリスクは伴います。しかし、世界経済をリードする米国の中でも、特に厳しい基準をクリアした優良企業に、1株という少額から分散投資できるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。 [3, 27]
本記事を参考に、まずはネット証券で口座を開設し、気になる配当貴族銘柄を1株から購入してみてはいかがでしょうか。それが、あなたの将来に向けた安定的な資産形成の、大きな第一歩となるはずです。